神々のつぶやきNO.14 いずれも先達から聞き及んだ話だが…

我が輩は猫であります。
ですが以前は人間もしておりました!
人間時代に聞き及んだ話をするニャー。
西洋であった話だが…

裁くなかれ成り【後編】
何事も我が輩が人間だった頃出会った話だがニャー。

【前回より続く】
老人には若い息子がいた。一人息子だ。
この若者が野生の馬を馴らしはじめたのだが1週間ほどたった頃、彼は馬から落ちて両足を折ってしまった。
村人達はまたまた集まって来て…人々というのはどこでも同じだ。どこにでもいる! またまたお裁きだ。

彼らが言うには「あんたは正しかった。あんたの言ったことがまた正しいことが証明されたね。
やっぱりお恵みじゃなかった。災難だったんだよ。一人息子の両足を駄目にしちゃったんだもの。
あんたの歳になったらあの子は唯一の支えだっただろうに。前よりひどい貧乏暮しになってしまう」

老人は言った。「あんたがたは裁くことにとりつかれている。そんなに行き過ぎなさんな。
ただ私の息子が足を折ったとだけ言えばいいじゃないか。これが災難か恵みか誰にわかるね?
誰にもわからない! これもまた一断片だ!」

こんな事があってから数週間経った頃、隣国との間に戦争が始まった。村や町の若者達はみな強制的に徴兵されていった。
ただ一人、あの老人の息子だけは足が不自由なために徴兵をまぬがれた。どの家からも若者達が強引に連れ出されていく。
人々は身を寄せ合って泣きくれていた。村中の人々は泣き叫び悲嘆にくれながら老人に言った。
「あんたは正しかったよ。爺さん、神様は知ってなさったね! あんたは正しかった。
あれがお恵みだったことが証明されたじゃないか。あんたの息子はあんたと一緒にいられるんだもの」

老人は言った。「あんたがたとはもう話ができないよ。あんたがたときたら次か ら次へととめどなく裁きつづけてきりがない。
先は誰にもわからないんだ! 言うのならこれだけ言えばいいさ。
強制的に軍隊に入らされた! そして私の息子は強制されなかったとだけね」

何が恵みか災いかは誰にもわからない。誰もそれを知ることのできる人はいない。
(神のみぞ知るのさ)

裁くなかれ!
そう。
この人は素晴らしい⁉
あの人はダメだ!?
この人は光明を得ているか!?
あの人は光明を得ていない!?
ひとたび裁いたら、何事も成長は止まるとニャー!
神は裁かず! 人は裁く! とさ。
さあ、神社でも行くか!

勾玉小僧拝

PAGE TOP