神々のつぶやきNO.13 いずれも先達から聞き及んだ話だが…

我が輩は猫であります。
ですが以前は人間もしておりました!
人間時代に聞き及んだ話をするニャー。
西洋であった話だが…

裁くなかれ成り
何事も我が輩が人間だった頃出会った話だがニャー。

ある村にひとりの老人が住んでいた。ひどく貧乏していたが、ただ、王様や金持ちがうらやむような
美しい白馬を一頭もっていた。それは今まで見たことがないような見事な馬だった。王様はもちろん、
お金持ちの人々がその馬を欲しがって途方もない代価を払おうとした。しかし老人は決まってこう言った。
「この馬は私にとっては馬じゃありません。これは人なんです。人をどうして売れましょう。
これは私の友達なんだ。所有物じゃないんです。売るなんてことはできない」
貧しい老人にとって大金は大きな誘惑だったが。

ある朝のこと、白馬が厩からいなくなっていた。村中の人達が集まってきて言うには、
「じいさん、あんたばかだったよ。私達は前からわかっていたんだ。いつかあの馬が盗まれるだろうってね」
だから言っただろう、売っておいた方がずっとよかったんだよ。
すると老人は言った。「先に行き過ぎなさんな。厩から馬がいなくなったとだけ言えばいいじゃないか」
それが事実だろう。ほかの事は判断評価だ!これが災難かどうかあんたがどうして分かる?どうやって裁くのかね?

村人達は笑った。宝を失くしちまったことは事実だ、災難だったこともね、と。また、この年寄りは少し狂っていると。
さもなければとっくにあの馬を売って豊かな暮しをしていただろう。ところが樵(きこり)のような生活だ。
とても年を取っているのに、まだ木を切って森から運びだし、それを売って暮しているんだから。
みじめで貧しいその日暮し。今ではもう、この老人が狂っていることは疑い様がなかった。

それから15日たったある日、突然その馬は戻ってきた。
馬は盗まれたのではなかった。ただ逃げ出して野生の生活をしていただけだった。
それに、ただ戻ってきただけではない。
12頭の野生の馬、それも誰が見ても素晴らしい馬を連れて戻っていた。
ふたたび人々は集まってきて言った。
「じいさん、あんたは正しかった。私達がまちがっていたんだ。災難じゃなかったね。
これはお恵みだったんだね。強く言い張ったりしてすまないことをした」

すると老人は言った。
「またまた行き過ぎだよ。ただ馬が帰ったと言うだけでいい。12頭の馬があの馬と一緒に来たと言うだけでいい。
裁きなさんな。これがお恵みかどうか、いったい誰にわかるのかね?
物事は全体の事情がわかるまではどう判断することもできまい?」

本を1ページ読むだけで本全体をどう判断できるかね?
一話のうち一行を読むだけでいったいその一話をどう判断できる?
これを恵みなどと言いなさんな! 誰にも分からないことだよ!
そして老人は言った。自分は(判断せず評価せず)で大いに幸せなんだ。邪魔しないでおくれ!と。
今回は、人々は何も言うことができなかった。もしかしたらまたこの老人の言う通りかもしれないからだ。

そこで人々は黙って一言も言わないでいたが、心の内では老人がまちがっているのだとよくわかっていた。
老人の馬と、ともに来た12頭の美しい馬、ちょっと馴らせばこの馬達だって全部売れる。
そうなりゃ大金がころがりこんでこようものを!!! さあどうなる!
この老人には若い息子が一人いた…続く。

次回をお楽しみニャー

勾玉小僧拝

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