我が輩は猫であります。
ですが、以前は人間もしておりました!
人間時代に聞き及んだ話をするニャー。
【大井戸捜査網!事故中心的捜査隊物語】 その①
ある国のあるところで大きな祭りがあって、多くの人が集まっていた。
と、その附近に囲いのない井戸があり、男が一人落ちてしまった。
男は必死に大声をあげたが、祭りの騒ぎや群衆の騒音で誰一人叫び声に気づかない。
そのうちにビンという名の僧侶が井戸に近寄ってきた。喉が渇いていたのだろう。
井戸を見下ろすと男が泣いたり叫んだりしている。
「助けてくれ~!」
すると、ビンは言った。
「誰も他者(ひと)を助けることはできないと釈尊は申されました。おのれ自身の光たれ!
誰も他者を助けられる者はいない。助けを待つではない。それどころか、釈尊はこうも申された。
すべての人は己のカルマ(業)を苦しまねばならぬとな。
おまえさまもどこかで罪を犯されたからこそ、このように苦しまねばならぬのだろう。
ならば静かに苦しまれるがよい。大声を出したり泣いたりせぬことだ」
井戸の中の男は叫んだ。
「まずは助けてくださいよ。後でゆっくりお説教も聴きますから。今聴こうったってムリだ!」
しかしビンはさっさとその場を離れて行った。というのも、
『他者のカルマに関わるなかれ』という仏陀の言辞を覚えていたからだ。
次にやってきたのは儒者。これも一人の僧だった。かれも井戸を見下ろした。男はまた叫んだ。
「助けてください。死にそうなんです。誰にも聞こえないようなんです」
すると儒者は言った。
「やはり孔子は正しかった。孔子はすべて井戸には囲いを作るべきだと言ったんだよ。
だから心配することはない。我々は大躍進して社会を変えて行く。
そして政府をして国中の井戸に囲いを作るように圧力をかける。だから心配しなくていい」
井戸の男は言う。
「でも、その時までには私は死んでしまう。
それに私はもう落っこちてしまったんだから、 そんなことがどう役に立つんだ!」
すると儒者は言った。
「それは大したことじゃない。個人は大事じゃないんだ。個人は来てまた去って行く。問題は社会だ。
だから君も、こんなことは二度と起こらないということを心のなぐさめにして平和に死ねますよ」
孔子は社会の改革者だね…トホホ?
さて次に現れたのが世界最大の宗教団体の方であった。イヨッ!ミスター宣教師!
かれは井戸を見下ろすと、落ちている男が何も言わないうちに自分のカバンを開けた。
中にはロープの付いたバケツも入っている。この方は常に、奉仕する万全の用意ができているみたいだ。
ビョーン!! 男はまだ何ひとつ言っていないのに…
アンレマー! 一体どうなるの?
続く。
我が輩も泣きたいニャー
ドット疲れてきた!
神社でも行くべか!
勾玉小僧拝