◎外宮と食
伊勢神宮外宮は主に豊受大御神を祀っており、豊受大御神は農業、特に食物や穀物の
神様です。そのため、外宮は食や農業、特に稲作に関する祈りの中心として、古来よ
り多くの信仰を集めてきました。
現代では気象衛生等で天候の予測がつきますが、太古の昔はこうした技術がないため
日照や降雨の予想がつかず、御日様や恵みの雨を神様に祈ることしかできなかった。
豊受大御神は穀物や食物全般を司る神とされるため、外宮を訪れる人々は農作物や食
料が豊かに実ることを祈るために参拝したのでしょう。
食事を通じて、感謝と祈りが込められるという考え方もあります。食事は命の源であ
り、日々の食事に対して感謝の意を持ち、祈りを捧げることが大切にされています。
実際、伊勢神宮の周辺には神々に奉納するための料理や、祭りの際に食べる神聖な食
材が用意され、参拝者に提供されることもあります。
伊勢神宮では、日々の生活の中で神様に感謝し、祈りを捧げることが重要視されてい
ます。特に外宮では、豊受大御神への祈りが、農業の繁栄や食物の恵みをお願いする
意味合いを持っています。
◎願いと祈り
“願い”と“祈り”は、どちらも心から望むことを意味しますが、そのニュアンスや
使われ方には違いがあります。
“願い”は、自分の望むことや希望を強く思うこと。自分が望む状況や結果を達成し
たいという願望や願望そのものを指します。言うなれば、自分自身の望みや願望に焦
点を当てることが多い。一方“祈り”は、神仏や自然、宇宙などに対して、心から願
う気持ちを込めて、何かをお願いする行為や、その行為自体を指します。
このように、願いは日常的で個人的な望み、祈りは神や仏に対して、心を込めてお願
いする行為や儀式的な側面が強いのです。
外宮では定期的に祭りや儀式が行われ、その際には神前で祈りが捧げられます。参拝
者は、神前で手を合わせ、神様に感謝や願いを伝えることができます。これにより、
神様とのつながりを感じ、日々の生活における恵みを再確認することができます。
豊受大御神に対する祈りの中心的なテーマの一つは「五穀豊穣」です。これは、稲作
に欠かせない五穀“米、小麦、大豆、稗(ヒエ) 、粟(アワ) ”を豊かに実らせるよう
にと祈るものです。外宮では、この五穀豊穣を祈るための祭りも行われ、参拝者もそ
の中で食物の恵みに感謝の意を表します。
食物は単に身体を養うだけでなく、生きる力そのもの。外宮での祈りは、命を養う食
物に対する深い感謝の気持ちと、それを育ててくれる土地や自然への感謝を表すもの
でもあります。
◎私たちの祈り
伊勢神宮外宮における「食」や「祈り」は、単なる日常的な行事にとどまらず、命を
支える根本的な力として大切にされています。豊受大御神への祈りは、食物の恵みと
それをもたらしてくれる自然への感謝を深め、日々の生活を支える大切な意味を持っ
ています。参拝者は、外宮を訪れることで、食事を通じて感謝と祈りの大切さを再認
識し、より豊かな生活を祈ることができるのです。
辰彦