神々のつぶやき NO.17 いずれも先達から聞き及んだ話だが…

我が輩は猫であります。
ですが、以前は人間もしておりました!
人間時代に聞き及んだ話をするニャー。
西洋であった話だが…

ヤクソク! その①

「なにゆえか知らぬが、余はある指輪を求めて心駆られている。
我が心の態を安らかに定めることのできる指輪だ。余はそれを有さねばならぬ。
その指輪は、余が心晴れぬ折には悦びを与え、また同様に悦びにある折に、
見ると悲しませるものでなければならぬ」

王に仕える賢人たちは互いに相い談じ、共に熟考した。

やがて、彼らは王の求めに叶う指輪の特徴(しるし)を決めるにいたった。
賢人たちが案出した指輪にはかく銘が彫られていた
「これもまた過ぎ去る」

その指輪が王の元に来た経緯は次のとおりである。
ある崇高な乞食(こじき)から授かったものだった。

彼は言った。
「これを王に渡すがいい。だが、一つだけ条件がある。王に言いなさい。
もうこれ以上耐えることはできないと感じるまで、この指輪の蓋を開けてはならない、と。
宝石の下に言辞(メッセージ)が隠されている。しかし、好奇心でそれを開けて見てはならない。
そんなことしたら、その言辞(メッセージ)の意を取り逃がすだけだ。
言辞(メッセージ)はそこにある。が、それと出会うためには、意識の上でもっとも適切な瞬間が必要だ。
それは宝石の下に彫られてこそいるが、簡単に開いて読めるような死んだ言辞(メッセージ)ではない。
この条件は、どうしても守られなければならない。
つまり、すべてが失われたとき、もう考えることすらできない完全な混乱状態、
これ以上ないほどの苦悶、もう何一つできることはないまったくの絶望状態…
こうなったとき、はじめてその指輪を拾い見るがいい。言辞(メッセージ)はそこにある」

王は条件を守った。
いつの間にか王は戦いに敗れ、国を失い、敵は勝利を得た。
王は何度指輪を取り出してその言辞(メッセージ)を読もうと思ったことか…
しかし、そのたびに王は、まだ全面的(トータル)にその瞬間に至っていないと思った。

「私はまだ生きている。たとえ王国を失っても!」

さて一体、この王はどこに行くのかニャー
次回をお楽しみに!
今年もよろしくネ。

勾玉小僧拝

PAGE TOP