私は京都市内で記念品を販売する会社を経営しています。
商売を営む者にとって、伊勢神宮は単なる観光地や神社ではなく、日本人が古くから大切にしてきた「誠実さ」や「感謝の心」を改めて見つめ直す場所だと感じています。
・誠実さを見つめ直す場
伊勢神宮には「常若(とこわか)」という考え方があります。20年に一度、社殿や御装束・神宝などすべてを新しくし、大御神に新宮へご遷座いただく「式年遷宮」という最大のお祭りが行われます。この伝統は、常に清らかさと新しさを保ち続けるという精神にもつながっています。これは、商売においても通じるものがあると思います。
お客様に誠実であり続けるためには、現状に満足せず、常に刷新や改善を重ねる姿勢が大切ではないでしょうか。
とくに伝統を重んじる京都においては、良いものは守りながらも、常に新しい分野に挑戦する心構えが必要だと感じます。
・感謝の心を思い出す場
伊勢神宮の正式な参拝作法では、「お願い事をする」のではなく、「日々の恵みに感謝する」ことが大切とされています。
私も伊勢神宮を訪れるたび、自分が大きな流れの中で商売をさせていただいていることを実感します。
お客様が日々足を運んでくださることや、仕入れ先、地域の皆さまに支えていただいていることは、決して当たり前ではありません。参拝のたびに、「感謝」が商売の原点であると改めて強く感じます。
私は京都御所の向かいで商売をさせていただいています。
祖父がどのような想いでこの場所に出会い、商売を始めたのか、今となっては直接尋ねることはできませんが、祖父が築いた土台を両親が大切に受け継ぎ、数多くのお客様やご縁に恵まれたからこそ、今こうしてこの場で商売を続けられているのだと思います。
これからも祖父や両親から受け継いだこの場所で、誠実さと感謝の心を大切にしながら、商いを続けていきたいと考えています。
理事 小川 隆之