コラム2025.3 我が町の氏神様をご紹介(埼玉県・浦和編)

毎回執筆者が交替するリレーコラム第2弾です。
形式もテーマも自由ということなので今回は「マイ神社」をご紹介したいと思います。地元の神様です。

◆鳥居の無い神社

私の地元の神様は「調神社」です。「調」は「つき」と読ませます。中学生の頃、歴史の勉強で「租・庸・調(そ・よう・ちょう)」というのを習ったと思いますが、その「調」です。大昔、貨幣がありませんでしたので、税は米で納めたり(租)、労役という形で納めたりしましたが(庸)、そのうちの「調」は布や絹などの諸国の特産物で納める税で、どうやらこの神社は「調」と呼ばれる貢物の集積場だったらしいのです。
「調」を運び入れるためには鳥居が邪魔になります。そのためか、この神社には鳥居というものがありません。鳥居を取り払うよう命じたのは倭姫命(やまとひめのみこと)であると伝えられています。皇大神宮(内宮)を創建された倭姫命です。
調(つき)と同音の「月」からの連想で「兎(うさぎ)」との縁も深く、神社入口には「狛犬(こまいぬ)」ならぬ「狛兎」が鎮座し参詣客を出迎えています。

◆小学生以来の関り

地元では調神社とは呼ばず「調宮(つきのみや)」と呼ばれ親しまれています。年末に行われる酉の市(十二日市=じゅうにんちまち)は小学生の頃の大きな楽しみでした。古い話なので記憶は確かではありませんが、その日は学校が半日で終わったと思います。今で考えられないことです。
我が娘二人の初お宮参りも七五三も当然ながら調神社に参拝しました。
ずっと後になって、会社を始め、社用の駐車場を探していたところ、偶然見つかったのが調神社の隣接地でした。位置的にはちょうど本殿の真裏あたりになります。これは良い場所が見つかったと即刻契約し、以来四半世紀となります。表からの参拝は月に二、三度ですが、裏からは毎日参拝しています。

◆御祭神は天照大御神と豊受大神

調神社の御祭神は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、豊宇気姫命(とようけひめのみこと)、素盞嗚尊(すさのおのみこと)です。
慣れ親しんだ神社ではありますが、正直なところ、御祭神についてはあまり意識したことはありませんでした。
しかし、勾玉会と関わるようになり、ふと思いました。自分は、そうとは知らず長年にわたり内宮の神様・天照大御神と、外宮の神様・豊受大神(豊宇気姫命)への参拝を続けてきたわけです。だとしたら神宮にたどり着くのはある意味、自然な流れなのではないかと。

◆約束は果たせぬままに

武本俊会長も、天照大御神と豊受大神を同時にお祀りし、かつ倭姫命とも関わりの深いこの神社には興味をそそられたようで、ある時、急に「写真を撮って送って欲しい」と連絡がありました。私はさっそく鳥居の無い鳥居やら、狛兎やらの写真を送りました。すると数日後、「東京に行ったついでに浦和まで足をのばして調神社に参拝してきた」と電話がありました。「なんだよ。声かけてくれたら案内したのに」と思いましたが、前後にさまざま事情があったのでしょう。「次は一緒に行こう」と約束しましたが、果たせぬままに終わりました。

(伊勢神宮勾玉会理事・梅野弘之)

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