コラム2025.6 神社とお神楽について

私は音楽に携わっております。そこで、音楽について書き始めたのですが、なかなか筆が進みませんでした。その理由は、日本の音楽や芸能の歴史についても触れる必要があると感じ、皆様と一緒に楽しく知識を深めていければと思ったからです。

私が初めて伊勢神宮を訪れたのは、勾玉会の奉納演奏がきっかけでした。作法もわからず、「こんなすごい場所に来てしまった」と驚いたのを覚えています。御神楽の奉納や正式参拝など、目まぐるしく行事をこなした記憶があります。その中で、「御神楽とは何だろう?」という素朴な疑問が湧きました。東京で生まれ育ち、何の疑いもなく過ごしてきた私は、日本のことをあまり知らないのだと痛感しました。この思いは、留学中にも何度も感じたことです。

そこで今回は、神社とお神楽について、皆様と楽しくお話しできればと思います。

伊勢神宮の歴史をたどると、約2000年前にさかのぼります。これは⻄暦とほぼ同じ時期であり、ヨーロッパではキリスト教が広まり始めた頃だと思われます。 さて、今回のテーマである「御神楽」ですが、日本に雅楽が定着したのは8世紀ごろといわれています。雅楽は外国から伝来したもので、一緒に伝わった楽器の中には、⻑い年月を経て使われなくなったものもあるようです。歴史的には、奈良東大寺の大仏開眼供養法要の際にも雅楽が演奏されたと伝えられています。 一方、ヨーロッパでグレゴリオ聖歌という言葉が使われ始めたのは9世紀ですので、雅楽の方が少し早い時期に日本に根付いたことになります。

雅楽には、神楽、東遊、大和舞、五節舞、久米舞、田舞、誄歌、唐楽、高麗楽、催馬楽、朗詠など、さまざまな種類があります。100年ほどの時を経て、これらが日本に浸透し、神社のお神楽殿では雅楽の中の神楽が奉納されるようになりました。もちろん、伊勢神宮では他にも多くの雅楽が祭事で演奏されています。雅楽やお神楽が伝わる以前はどうだったのか、残念ながら私にはわかりません。しかし、有史以前から日本では何らかの音楽を奏で、神に奉納していたのではないかと思います。また、御神楽を奉納された方の中には、不思議に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。基本的に舞は私たちに背を向けて行われますが、これは神様に楽しんでいただくためであり、奉納者自身のためではありません。しかし、奉納の中でどのような物語があるのかを知ることで、より深い信仰につながるのではないかと思います。

私は海外で約5年間過ごし、諸外国の方々が自国の宗教をとても大切にしていることを強く感じました。私自身、まだ知らないことが多いですが、これから皆様と一緒にさまざまな疑問を解き明かしていきたいと思います。

参 与 寒河江 誠

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